CBR1000RRにはこの手のバイクには珍しく国内仕様なんてものが存在する。逆輸入フルパワー車との大きな違いは以下の2点だ。
パワーの欲しい人は逆輸入車を買えばいいのだが,実は簡単(お金はかかるけどね)に国内仕様もフルパワーにできるとなると話が変わってくる。特に「ノーマルのサイレンサーが不細工だ」とか「排気音が静かすぎて気持ちよくない」なんて人は要注意だ。そんな人はフルパワー車を買ったとしてもサイレンサーを社外品に交換するだろうし,そうなるとスリップオンタイプで7~8万円の出費になるだろう(この時点で国内仕様との差は約30万円弱だ)。
だが,国内仕様を買ったとしてもプラス8万円コース(スリップオンサイレンサー購入)かプラス20万円コース(フルエキ購入)でフルパワーになるとなれば...ご注文はどっち?
という訳で2004年国内仕様を購入したので一応インプレを。
慣らし中の5000rpmまではとってもスムーズ&結構パワフルで,「これで充分かも?」と一瞬は考えたが,6000,7000rpmと上限をあげるにつれ高まる不満。なんかどんどん線が細くなり,それなりに速度は上がっていくが,なんていうか「マスク付けて駆けっこ」みたいな息苦しさ(実際,設計者が本来意図した空気量からは,ある理由により全然少ないんだが)を感じるフィーリングで気持ちよくない。
これじゃ全然ダメで前のVTRの方が体感上は断然速い!(データが消えてる。残念。 国内仕様はこんな大胆なパワーカーブだったんだ...ヨシムラの国内仕様向けスリップオンサイレンサーのパワーカーブより...) 「よくぞこんな特性で国内販売したな」とホンダを誉めてあげたいところだ。まぁ,苦労して出したパワーを手間暇をかけて押さえるなんてことはコスト上できないだろうからしょうがないか。
いよいよフルパワー化の開始だ。インターネット上のあちらこちらで紹介されているが,2005年式までの国内仕様をフルパワー化する上での最大のポイントは以下の3点だ。
国内仕様はパワーを出す必要がないので,当然必要空気量も少なくて充分な訳だ。そのため,下記3カ所で吸気量制限がおこなわれている。
国内仕様はサイレンサーの排気口が小さいだけでなく,エキゾーストジョイントパイプ(4気筒の集合後からサイレンサーまでの間をつなぐ部分。車体右側のステップの奥にあるやつだ)内部に絞りが入っていて排気経路が狭くなっている。左画像は,エンジン側からサイレンサー側に向けて見た内部構造だが,中央の金色のリング状部分から内部に出っ張りが伸びている。よって,この部分を含めた社外品スリップオンサイレンサーかフルエキ(こちらは純正フルパワー仕様品もしくは社外品どちらでも可)に交換すればOKだ。
そこで,純正エキパイ1式(画像中央)をAkrapovic Evolution line チタンフルエキ(右画像)に交換だ。
上記2点で押さえ込んだ吸排気量にあわせるため,当然,燃料噴射量も少なくなっている。これを本来の噴射量に戻すためには燃料噴射制御装置(PGM-FI)のプログラム変更が必要になるが,ありがたいことに国内仕様・フルパワー仕様の両方のプログラムが元々入っている。これを切り替えるには,車体右側ミドルカウルの中にあるPGM-FIユニットの配線変更だけでOKだ。
黒コネクターの28番の緑色のケーブル(アース線)を切断し,白コネクター側の15番か16番の「黒地に白ライン」のケーブル(+12V)に割り込もう。(この方法は04-05年式モデルについてのものだ。06年以降のモデルはCPUが全然違うのでこの方法ではできないぞ)
以上の作業が完了したら,サーキットにでも持ち込んで思いっきり開けてみよう。180km/hrでリミッターが掛からずに,さらに気持ちよく加速していけば,たぶん問題なくフルパワー化されているだろう。
ここまでの作業で逆輸入フルパワー車とほぼ同等のパワーが得られるはずだ。それどころか,エキパイを社外品に交換している場合はセッティングさえ決まればさらなるパワーを期待できるぞ...というか,セッティングが決まってないとノーマル逆輸入フルパワー車に劣るなんてことも充分あり得るが... なんせ,社外品フルエキorスリップオンではサイレンサー手前にある排気デバイスを取り外す必要があるので,そのままでは抜けが良すぎて低速トルク感が失われる可能性があるし,中高回転域でも排気効率がいいために空燃比(A/F値)が薄くなりすぎてパワー感が無くなるかもしれない。そこで,社外エキパイとのマッチングを取るために,空燃比計およびインジェクションコントローラーを取り付けてベストセッティングを出すことにしよう。
2004年式CBR1000RRの吸気口にはダイレクトエアインダクションコントロールバルブなんてものが付いている。その機能をHONDAWEBサイトのCBR1000RR主要装備紹介ページ(過去モデルへのリンクはどこだ?)から引用してみよう。
フロントのエアインテークから走行風を取り入れ、大量の空気を直接エアクリーナーに送りこむダイレクト・エア・インダクション・システムを採用。速度に応じて最適な空気量を得るために、吸入部にフラップを装備し、その開閉をECUで制御することで中・高速域のパワーとレスポンスを向上。
となっている。「なんだ,ラムエアダクトのことか」となりそうだが,気になるのは後半のフラップ開閉云々というところだ。イメージ画像がhttp://www.honda.co.jp/factbook/motor/cbr1000rr/200404/010.htmlに掲載されているが,現物は下画像のようにラジエータの上部にあるぞ(画像は外側のネット状部品を外してあるが)。
で,問題はこいつを閉める必要があるのかどうかってこと。特に「中・高速域」にこれを閉めて吸気抵抗を増やしても「パワーとレスポンスが向上」するはずは無いんだが...
じゃぁ,どんなときに閉まるのかだが,気になるのは巷に流れているウワサ「5000rpmまではこれを閉めて吸気音を低減させる(騒音測定は5000rpmまででやるらしい)」だ。なんかこっちの方がもっともらしい(^^;
いずれにしろ,「こんなものいらねぇや」と取り外してしまいたいのだが,「燃調が変わるんじゃないの?」という心配点がある。そこで,まずは下画像のように左ミドルカウル内にあるフラップの駆動用ソレノイドバルブの配線(画像中心からちょっと右。下に垂れ下がっているのがビニル袋を被せて雨対策をした配線だ)を外してフラップを全開状態で固定とし,しばらくの期間,データを取ることにした。
この配線を接続した場合と外してある場合のA/F値の比較が下のグラフ(上段:配線接続時,下段:配線取り外し時)だ。インジェクションコントローラーRAPiDBIKEでの補正をゼロにして計測してあるが,あまり気合いの入ったデータ収集をやっていないのが申しわけないところだ(^^;
結果としては,変化があるような無いようなデータである。まぁ,気にするほどの差でないって事なんだろう。で,なぜそうなるかを考えると,
真相はホンダのエンジニアにでも聞かないと判らない(いや,もっとまじめにデータを取れば...)ので,ユーザーレベルとしては,A/F値に差が無いという事実だけで問題無しと判断し,フラップを撤去してしまおう。
まずはフラップの撤去だ。この部品はまっとうな方法で取り外そうとすると,タンクカバー・フィルターボックス・インテークダクトをばらさないとダメなので大変だ。だから,組み込まれたままの状態で糸ノコ(というか,ジグソーの刃)で両端をギコギコ切断してしまおう。樹脂パーツなので簡単だぞ。
次に駆動部品の撤去だ。左ミドルカウル内にあるバキュームチャンバーとソレノイドバルブを取り外してしまおう。注意点としては,エンジンから伸びてきている負圧チューブはメクラ栓をする必要があるって事ぐらいで,これは,チャンバー固定用のボルトがジャストフィットしたので流用して塞いでおいた。これでカウル内の風通しも良くなるに違いない。ただ,フラップを直接駆動しているダイヤフラムバルブは取り外せないのが残念だ。
さぁ,これで吸気系から余分なものが一つなくなったので,空気の流れがスムーズになり,ますますパワフルになる...かもしれない...
え~...なかなかパワーチェックに持っていく勢いがないので手持ちのロギングデータ(下画像:3速で計測)の回転数データだけから馬力を求めてみることにしよう。
まずは必要な公式の確認だ。必要な公式は以下の二つだけだぞ。
運動方程式 | F[N]=m[kg]×α[m/s2] |
---|---|
動力 | P[W]=F[N]×V[m/s] |
まず質量mだが,これは,
m=車体+冷却水+オイル類+ガソリン+運転手=290[kg] |
とする。次に加速度αだが,加速度とは単位時間当たりの速度の増加分なので,データサンプリング点毎の計測間隔(WideBandCommanderでは0.1sec)とそのときの回転数差から求めることが可能だ。
α[m/s2]=(rpm2-rpm1)[rpm]÷60[rpm->1/sec]÷0.1[sec]÷1.604[一次減速比]÷1.578[3速ギヤ比]÷2.5[二次減速比]×π[円周率]×0.62[リヤタイヤ直径 m] |
速度Vも同様に
V[m/s]=rpm[rpm]÷60[rpm->1/sec]÷1.604[一次減速比]÷1.578[3速ギヤ比]÷2.5[二次減速比]×π[円周率]×0.62[リヤタイヤ直径 m] |
となる。さてそれでは計算してみると...(上の公式に値を代入して求められるのは単位Wだ。これをPSに換算する方法はここでは省く)...
だ。この計算では空気抵抗分は考慮してないので実際のエンジン出力はもう少し高くなるはずだ。ついでにスロットル開度のデータも参考に加えてみたが,10000rpm以上では戻しているものの,ほぉら,後輪で160PSオーバー達成だ!?(なんちゃって...)。
上で紹介したように,インテークエアダクトから可動フラップを撤去してしまってるわけだが,今回,プラグ交換の際(『CBR1000RRワンポイントネタ:プラグ交換時の注意点』参照)に,インテークエアダクトをばらして気づいた点をカスタムしてパワーアップを目論もうかと。
それが下の画像。向かって左側が吸気口でエアフィルターボックス側だ。これは,エンジン高回転時に吸気口中のフラップ(ダイレクトエアインダクションコントロールバルブ)が全開状態の時で,画像中央部に注目しておいて欲しい。
そして,低回転時にフラップ全閉となった場合は,こうなる。 通常の吸気口はふさがれるが,この部分が開いて,空気の通り道を確保することになっている。 どうしてこんな凝ったことになっているかは上で想像したが,現状ではフラップを撤去してあるのでここは閉状態で固定としていた。
ところが,この部分を車両前方方向から見ると,この吸気通路は現状では何の役にも立ってないことがわかるだろう。 これはもったいない! って事で,この部分に穴を開けることにした。
さて,作業開始だ。 といっても,得意の糸ノコとカッターでプラスチックをざくざくと切り取るだけだが。 そしてできあがったのが下の画像。 このように,ダクト本体と,その上に装着するネットに穴を開けてやることで,吸気口面積が従来に比べて数パーセント拡大するわけだ(測るのが面倒なので具体的な数値は出せない)。おっと,フラップ端部は閉まった状態でコーキングでもして動かないようにしないとね。
下の画像の左半分がビフォー,右半分がアフター。 これで,ラムエア効果の得られる速度領域では吸気量がさらに増えて,よりパワフルになるに違いない!(って妄想だ)
車両購入からかなり月日が経過し,最新モデルの情報を意識して遮断するようになってきた今日この頃。まだまだ本来の能力をフルに発揮させているとは思えないので,ちょっとカツを入れてみようかな,とポチッたのが今更ながらのなんちゃってパワーアップ用の定番アイテム,ハイスロットルだ。
とまぁ,購入したのは『ACTIVEハイスロットルキットEVO』だ。ちょっと高めの価格設定ながら,径の違う2個のワイヤー巻取り部がセットされた商品なので,
と,2度おいしいかも,ってのが選定ポイントだ。
上記の方針により,φ38の取付を始めたのだが...
タンク・エアクリーナーボックスを取り外して現れるスロットルボディ。ここでスロットルワイヤーをハイスロ用に交換しなければならないんだが,見えにくく狭い場所でタイコをひっかけなければならないのでちょっと大変だ。
『VTR1000Fパワーアップ:なんちゃってパワーアップ編』で実施した,スロットル閉側ワイヤーの撤去をついでにやってみたものの,全閉位置からさらに閉じる方向に回し続けると,
みたいな現象が発生。『これは危険かも』との判断で,今回は閉側ワイヤーの撤去は断念だ。
取付作業時完了時が次の画像。ロゴマークを見ないと交換しているのがわからないような渋めの黒ボディを選んだのがポイントだ。
さて,テスト走行を...『おぉっ,体感上は10PS以上のパワーアップだ!』...まぁ次第にスロットル開度を絞るようになるんだが...